13 Feb 2012

電子書籍アクセシビリティ・シンポジウム抄録

13日に実施されたシンポに参加したので、可能な限りメモ書きした内容からテキスト起こし。あくまでメモ書きベースなので、誤記の可能性が多分に混入している事についてはご容赦をー(´д`)

正直パネル「ディスカッション」と称しながらあんまディスカッションで議論が深まった印象もなく、「協会でこんな事やってます」という報告会でないのかと思ったけれど、その割に総務省がゴニョゴニョな感じでポカーン(゜Д゜)

まぁ出版、電書、図書館(障碍者用電子図書館的意味で)クラスタにとっては一定の意義ある情報ではあるかなと。

1.開会挨拶:電流協理事・凸版印刷 中尾光宏

電流協では三省(総務省・文科省・経産省)プロジェクトの下、電子書籍のアクセシビリティについて研究してきた。

電子書籍は話題だけは先行してきた。今年こそは実の入ったモノになるのではないかと期待している。

電書はアクセシビリティの側面から見れば、障碍(がい)者・弱視高齢者などに読書の機会を提供する読書人口の維持拡大という意義を持っている。

 

2.第一部:パネルディスカッション「電子出版におけるアクセシビリティの今後のあり方を考える」

コーディネーター:松原聡(東洋大教授)

パネラー:石川准(静岡県立大教授)、阪本泰男(総務省大臣官房審議官)、松原洋子(立命館大学教授)、丸山信人(インプレスHD執行役員)

 

松原聡「アクセシビリティという言葉は1、2年前は人口に膾炙していなかったが、最近急速に定着しつつある様子だ。電子出版の時代に、読書の難しい層にどうアプローチできるかを考えるものといえる。産官学(この並び方には異論もあるだろうが)のメンバーで議論を進めていきたい」

※各パネラーのプレゼン

・丸山信人「ソーシャル市場ビジネスとしてのアクセシビリティ」

電子出版アクセシビリティはデジタルによって出版物などの知識に近づきやすくなる事、情報・サービスにアクセスしやすくなる事の2面があると考えられる。

その対象は「読書障碍者(people with printed disability)」=高齢者(65歳以上)、言語習得過渡期の子供(5~14歳)、視覚障碍者、上肢障碍者、発達障碍児などや、外出できない入院患者などと考える事が出来る。

広義で捉えればいわゆる健常者も例外でなく、文字の読めない環境(満員電車の移動中など)や公共施設での利用、東日本大震災の被災地のような「本を読む事に困難が生じる」場合の全てをも包括しうる。

現在アクセシビリティ環境はボランティアベースで運用される事が主だが、持続的・継続的でなければ意味が無い。ボランティアでは活動・規模を維持し続けられない。そのために読書障碍者のためのアクセシビリティ・マーケットを作るべきではないだろうか。→「循環型ソーシャルビジネス設計」

2020年の市場を予測すると、アクセシビリティ・マーケットの規模は(上記のように健常者も含めた捉え方をすれば)1500万人、3000億円市場だ。

「デジタル・イノベーションの必要性」…文字拡大、TTS(Text To Speech)、インターフェイスのUD(ユニバーサルデザイン)化など。

「民間サービス」と「公共サービス」の重なり合うところに、新たな「ソーシャルサービス」が生まれるべき。産官学のリエゾンでこれを創造しよう。

 

・松原洋子「研究者にとってのバリアフリー化」

電書普及に伴う読書バリアフリー化を総合的に研究している。バリアフリーという和製英語を使うべきか発音しにくいアクセシビリティを使うか当初迷ったが、今後はアクセシビリティを使っていくつもり。

立命館大学では「生存学研究センター」があり、ここでは学際的な立場で「生きて在る我々」を学んでいる。ここで本件を扱っている。IRIS(Integrated Research of Accessible Ebooks: Interfaces & Services)。

ここでは先の丸山氏の広い「読書障碍者」でなく、ディスクレシア(文字判読障碍)に絞って述べていく。

2009年に提出した「書籍デジタルコンテンツ流通に関する報告書」

ICT(Information and Communications Technology)によるバリア解消…大学・大学院等での勉強や研究では大量の専門書や資料をスピーディーに読みこなさなければならない。だが読書困難者にとってこれは勉学上非常に不利な状況と言える。ICTの活用でこういうバリアを解消できるのではないか。可能性は高い。

「電書のアクセシビリティ」には様々な側面の問題がある。

出版社のワークフロー問題:下版データが印刷所管理になって手元にない、など。

テキストデータを出版社が用意できても加工が大変、など。

 

・松原聡「出版者にとっての電子書籍プラットフォーム」

問題意識:電子書籍=「夢の技術」(音声読み上げ・文字拡大縮小・可搬性・入手利便性など)

「夢」と思った切っ掛けは2009年のKindle2リリース。clearな英語で声も男女を好みで選べるなど、本当に時代の切り替わりを実感できた。視覚障碍者の方々はテキストデータを版元などから貰ってくるのに大変苦労していたり、自炊(自己購入書籍をスキャンしてデジタル化)・テキスト化という手間をかけるのが当たり前だったところに、こういうアイテムが普通のマーケット商品として出てくるという事実。

対して日本では東芝が先日出した読書端末くらいしか読み上げ対応端末が無い。

日本の現状:縦書きやルビへの対応などに要される独自性から、フォーマットもストアもデバイスも乱立してしまった。実用性の高いTTSもまだ出て来ない。アメリカは表記構造のシンプルさ故にここまで来れた感がある。

アクセシビリティというのは読書障碍者だけのためのものではない。そんな小さいマーケットではなく、もっと広汎なマーケットを持っているはず。何故ならアクセシビリティへの配慮を広く考えれば「ユーザビリティへの配慮」となるから(例えば健常者でも、指を怪我したらどうなる?)。

 

・石川准(サピエという電書図書館の実践状況について)

「自炊」という言葉。最近普及してきたが、その内実は書籍の画像データ化を主眼として、付随的にOCR(画像データからの文字認識技術)を行うデータ化と考えられる。これを私は10年以上前からやってきていた。

自炊のメリット=読みたい本がすぐに読める。かつては費用をかけて丁寧に校正して貰ったモノを読んでいたが、それでは中々ラインナップが増えないので少ししか読めない。今では原則未校正で読むようにしている。

自炊のデメリット=文字ベースの本でないと難しい。OCRの文字誤認識に耐えねばならない。統計データなどを見るのが大変。

アメリカでは「Bookshare」という視覚障碍者やディスクレシアの共同自炊型電子図書館がある。では日本ではどうか?→法的問題(著作物複製権等)、フリーライダー問題、自分で裁断できない問題、自分で校正できない問題などなどの障害がある。

「サピエ」=オンライン電子図書館。全視情協で運営している。「ないーぶネット」の点字書籍データと「びぶりおネット」の書籍音訳データを包括統合したもの。パソコンからでも携帯からでもデイジーオンライン(専用のWiFi携帯端末)からでもアクセスが可能。一般会員は利用料無料。コンテンツは全国のボランティアと情報提供施設が作成している。しかし丸山氏が指摘するように、いつまでもボランティアが居てくれる保証は無い→今後はTTSによる機械読み上げが主流になっていくだろう。

サピエの施設会員=点字図書館、公共図書館、ボランティアグループなど237。年会費4万円。サピエの所蔵データは全国の各施設にばらついているが、総数としては52万点。

サピエの一般利用者はこの2年で1.5倍になった。パソコン8割、携帯7%、残り13%が専用端末。ただ閲覧はともかくダウンロード数でみる環境対比は専用端末もパソコンと変わりなくなってきている。

しかしサピエは年1千万の赤字運営状態。コスト5千万に対し施設会員費や寄付、国の援助などのインカムが4千万。

「電子書籍の可能性」

・いつでもどこでも自由に読めれば、読書量は確実に増加する。

 読書は読書を誘発する。参考文献のリンクを辿って電子書籍ストアや電子図書館に誘導する事で、ユーザーの読書量は更に増加する。

・読書は多様な道具で行いたい。

・音声読み上げ機能は視覚障碍者ニーズに留まらない。

TTS技術は益々性能を向上させていくだろうし、例えばドライバーなどが音声リスニングによる読書をしたいというニーズも充分に考え得る。

「電子書籍のアクセシビリティ」

・Amazon:Selfvoicing(内蔵機能で読み上げ対応)

・Apple:スクリーンリーダー

(リーダーを開発、iOS自体の機能としてVoiceOverを搭載。スクリーンリーダーがTTSや翻訳エンジンをコントロールする形)

・支援機器ベンダーとの連携アプローチ

AmazonもAppleも独自に囲い込みした技術で、そこに外部の者はアクセスできない。例えばiOSの日本語変換技術がとても満足いく出来でないからATOKを導入したくても、ATOKpadのような形でしか利用できないような状態がTTSの領域でも起こる。ベンダーとの連携がUD的にはベストなのだが、アメリカでもこれは実現していない。AmazonとAppleという二大巨頭が共に独自路線なので、両者の選択を余儀なくされている。

 

・阪本泰男(政府がどんな事に取り組んでいるか)

高齢化社会の進展。インターネット利用者動向を見ても急速に65歳以上の高齢層が増加している。

障碍者の情報入手環境についてヒアリングを行うと、特にインターネットではデザインのユニバーサルデザイン非対応についての不満が出ている。

総務省が三省合同プロジェクトの中で取り組んでいる事。

  ePub3への日本語フォーマット採用の働きかけ、電子出版における中間フォーマット統一化の推進、アクセシビリティを考慮した電子出版の実現、高齢者障碍者に配慮したUDの標準化、JIS改訂を通したWEBのアクセシビリティ改善、放送におけるアクセシビリティ確保(字幕テロップ)など。

 

※以下ディスカッションとして

松原聡「ソーシャルビジネスという丸山氏の提言に対し、サピエは無償ベースで運営している。これはソーシャルであってビジネスではないのではないか」

丸山信人「ソーシャルかビジネスかというのは鶏と卵。産学官でヒヨコをまず作ればいい。日本ではサービスと言えば無償というイメージに囚われがちだが、そうでない形も成り立ちうる筈」

松原聡「サピエでは一般会員無料で運営が行われている。一般の電書ストアで有料のコンテンツも会員なら無料入手できる反面、コンテンツ自体が中々揃えづらいという問題があるのではないか」

石川准「私自身はソーシャルビジネス化したいと思っている。ただ経緯として障碍者が利用できなかった公共図書館に対する点字図書館という存在があった。そして図書館と言えば無料というイメージがある。私見としては更なるサービス拡充のために有償化をタブー視すべきでないと考えているが、現在内部で大激論中。有償化するくらいならサービスを止めてしまえ派と、サービスの質を落とす覚悟でも無料を維持すべきなのか派に分かれている」

松原聡「福祉=ソーシャルの観点からすれば、タダというのは分かる。ただ、視覚障碍者が現状30万人として、その30万人のみを対象にして終わるのか、更に拡大して1500万人を対象にするかの違いは大きいのではないだろうか」

松原洋子「電子書籍の利用について、図書館モデルと書店モデルの2つがあって、リアル店舗では棲み分けが行われていたが、ネットではKindleを筆頭にそのモデルがクロスオーバーしている。著作権法の改正によって大学図書館などでは著者許諾不要で複製ができるので、立命館大学ではコピーしてテキスト化している。先の福祉=タダ論も諸般の経緯があっての事と思うが、仮にサピエが赤字でなく運営がなりたっていたとしても問題ではないだろうか。それはユーザーにとってサピエ以外に選択肢が無い事になる。私自身は先の(広義の)読書障碍者のように有償で買う選択肢が、無償で手に入れる選択肢と同様にユーザーに与えられるべきだと思う」

阪本泰男「2009年当時、今のこの技術状況は殆ど想像できていなかった。今ではTTSも性能向上が見られるし、iOSの影響でUD意識も高まっている。これからは、これらの技術で電子書籍出版のどこにフォーカスしていくかというジェネラルな視点が大切」

丸山信人「ジェネラルな視点というのは賛成。ただ日本で中々電子書籍ビジネスが動かなかったのは、紙の本前提の著作権や出版契約で身動きが取りづらかったという事情がある」

松原聡「アクセシビリティには2つあって、①過去の膨大な資産へのアクセスと、②最新の情報へのアクセスとがあると思う。前者の観点では学術書や絵本などが殆どまだ電書化されていない」

石川准「書店モデルと図書館モデルの棲み分けは、電子の領域でも(棲み分けを)確保する事に意義はある。書店モデルが活発化するなら図書館モデルも活発化する。実際にアメリカではAmazon、Appleが巨大化する一方でBookshareが存在感を維持している。ただ現状、学術書や絵本はラインナップとして少なく(アメリカでも学術書は殆ど電子化されていない)、自炊せざるを得ない状態」

松原洋子「紙の本はすぐ重版未定・絶版になる。本当にその学術書に学問的意義があるのなら、ePubでTTSにも対応して広く読んで貰う事に意義があるのではないか。電書ベースの出版ラインになればコストも落ちる筈だし利用者にとってもプラスになる」

 

※会場からの質疑応答

質問「石川先生の本は、本を買った人ならテキストデータとしても読む事ができる。こういう形態にもっと拡大してほしい」

石川准「『障がい学への招待』で紙の本をテキストデータ引換券化するという事をやったが、これは数の出ない学術出版だからできた事。学術書の電子化は海外の状況を見ても中々動かないから、暫くはこの方法論にも意義はあるかと思う」

松原聡「今の話は今回のテーマとは異なるがDRMの統一も含めて考えたい」

 

※最後に一言ずつ

阪本泰男「アクセシビリティについて進展しているような説明はしたが、まだまだ各種分野では充分進んでいるとは思わない。著作権の対応にしても予算措置についても、国会図書館をはじめとする公共図書館の役割への期待もある。産業界として『電子出版』に限らず、『アクセシビリティ』にフォーカスして欲しい」

石川准「紙と電子は共生していくもの。UDとしてベストな方法論がアクセシビリティとしてベストとは言えない(AppleもAmazonもUDとしてベストであってもアクセシビリティ的にはセカンドベスト)」

松原洋子「サピエの自炊の試みが世間の先を行っていたという事実は、IT技術の汎用性を示している。技術のフレキシビリティが個別ニーズに様々に対応して展開しているという今の状況で、全てを充足させるUDというのは(観念論的になって)無理があるのではないか。必要な人が必要な形でアクセスできるようにするにはどうすれば、というアプローチにフォーカスできれば」

丸山信人「マクロ視点とミクロ視点が大事。マクロは日本全体のグランドデザインとして、例えば嘗ての『高度成長社会』に対して『高度知識社会』とかいったビジョンを作る事。ミクロとしては、松原氏の言うように必要な人のアクセスという問題もあるし、例えば震災被災地は『著作権特区』にして欲しい」

松原聡「読書が不自由な人は沢山いて、紙の本をデジタイズしてOCRというのはそういう人にとって、ひたすら面倒な作業でしかない。でも電子書籍を前提に作っている本なら、その負担が大幅に軽減できる。また、手を怪我した人や満員電車内とかは、狭義の障碍者で無い人にもアクセシビリティニーズがある。今後のため、今回のディスカッションが第一歩になれば」

 

3.第二部:アクセシビリティ研究中間発表

・東洋大学:プラットフォーム分析

出版のデジタル化におけるプラットフォーム分析(tu-RIP)という三年間プロジェクト。立命館大学のIRISと協力関係で進めている。

電子書籍市場の拡大により、この夢の技術を通じて使い勝手の良い電子書籍が広まる事が更なる市場拡大に繋がる→電書のユーザビリティにフォーカス、ユーザビリティ向上を考慮する際に各プラットフォームの分析が必要になる。

ユーザビリティは購入・利用それぞれにおけるインターフェイスと利用体験が重要。

ユーザビリティ指標を作成し、それに基づいてデバイス・ビューア・ストアを分析。

 

日本市場ではこの三者が複合して様々なパターンを作っている。

  ①垂直統合型(ストア~ビューア~デバイスまで一体展開)…Kindle、Reader

  ②水平展開型1:ローカル型(デバイスは汎用、ストアとビューアを固定)…日本の主流形態

  ③水平展開型2:クラウド型(デバイスもビューアも汎用、ストアを固定)…電書自体はセキュアなキャッシュ領域に展開、ID認証・同時接続台数制限の下にHTML5ベース

☆この分類は固定的なものではない。Kindleはデバイスから見れば垂直統合型だが、ストアから見ると水平展開。Readerもストアから見ると垂直統合だが、デバイスから見ると(紀伊國屋BookWebも楽天ストアも選べるので)水平型。

 

重要なのは、ユーザビリティ上にこれらの形態がどう影響するか。

Kindle、iPadはデバイスレベルでアクセシブル技術を搭載している(iOSはVoiceOverで標準アプリなら読み上げに対応している)。

 

では水平展開型では同じようなユーザビリティは難しいのか?

  →iOSはアクセシビリティAPIをサポートして開発すれば対応できるという話。しかしそれはiOS独自の「方言」をサポートするという事になり、そこまで開発リソースを割けるかという問題になる。しかも提供できる機能はAppleの用意した機能に限定される。好みのTTSボイスエンジンを選ぶといった技術が導入できない。

東芝BookPlaceの場合:ストア自体は水平展開だが、自社ハードのみはTTSエンジンをインストールして読み上げ機能が実現できるシステム。アクセシビリティを強く打ち出してはおらず、子供や通勤電車内での利用を具体例としてPRしている。

日本の電書市場の乱立とそれに伴う混乱がよく言われているが、それは本当に問題なのか。

  →アメリカではAmazon、Appleの方法論に乗っかる形のみになって(利用者・開発者との)「共同作業」ができない。逆に日本では「乱立」しているからこそ、差別化のためにストア・デバイスがアクセシビリティ配慮を行う余地がるのではないか。

 

390×120項目でアクセシビリティやユーザビリティの洗い出しを日々行っている。

その上で、整理・相互比較してユーザビリティの高いストア評価などを公式サイトで発表している。

 

・立命館大学:アクセシビリティに関する出版社アンケート

読書障碍者の読書体験の変遷

  書籍の点訳→IT技術によりOCR&テキスト化(自炊)→そして「電子書籍元年」(2010年)

しかし「元年」を迎えても、日本では対応電子書籍も対応端末も殆ど普及していない。

→出版社の動向把握と、課題の明確化がアンケートの目的

 

各種団体に所属している出版社の中から、日本出版年鑑2010に掲載している135社に質問、71社から回答を得た。

  1)電子書籍を刊行した事があるか

      ①ある…64社

      ②ない…7社

  2)(本問と次は刊行した事がある場合の64社対象)どのフォーマットを利用したか

      ①XMDF…42社

      ②画像PDF…32社

      ②.book…28社

      ④(その他各種)

  3)進出ストアは

      ①honto

      ②BookLive!

      ③ガラパゴスストア

      ④ReaderStore

      ⑤パピレス …の順

  4)アクセシビリティ対応についてどのような方法を検討したか

      ①検討していない…27社

      ②方法が分からない…21社

      ③読み上げ対応ストアでの販売…14社

      ④求めのあった個人・図書館にテキストデータを提供…12社

      ⑤電子書籍をDRMフリー化して障碍者対応デバイスで見て貰う…3社

  5)紙の本について障碍者支援用にテキストデータ提供依頼を受けたか

      ①受けてない…54社

      ②受けて提供した…12社

      ③受けて提供しなかった…5社

  6)アクセシビリティ配慮した電子書籍実現の障害は(複数回答可)

      ①手間・コスト…47社

      ②著作権処理…37社

      ③ストアが非対応…29社

      ④アクセシビリティに関する情報不足(ストアの仕様非開示・方法が分からないなど)…22社

質問4で注目したいのは、アクセシビリティ対応について「関心はあるが具体的方法が分からない」のが21社もある事。既に回答者3割が何らかの対応をしているので、この層が動けば6割の対応になりムーブメントができるのではないか。

 

・電流協特別委員会①TTS研究部会

出版アクセシビリティに取り組んで8年になるが、進展しない苛立ちは既に無限大。

用語の整理

  「ユーザビリティ(使い勝手の良さ)」は「バリアフリーデザイン(物理的バリアの除去)」・「ユニバーサルデザイン(最初から見やすく作る)」を通して、「アクセシビリティ(誰でも必要な情報にアクセスできる)」に至る。逆方向もまた真なり。

対象…視覚障碍、色覚障碍、発達障碍、及び聴覚障碍(盲聾唖)の一部

TTSは音声合成技術を使った読み上げ技術。

高齢化社会で高齢による読書障碍者は年々増加の一途を辿っている(現在人口の1/5、やがて1/4になるのは間違い無い)。

 

視覚障碍者は約30万人、裸眼視力0.5未満が165万人(近年若年近眼の増加を考えればこの層はまだまだ増える)、上肢障碍者は57万7千人。高齢者で、緑内障・白内障・老眼で読書に不自由している人も含めると、読書障碍者人口は1000万人以上となる。通勤ラッシュで本を読めない状況なども含めて考えれば潜在人口は膨大。

 

部会のテーマ

  ①TTS対応電子書籍の制作ガイドラインブラッシュアップ

  ②制作における課題(現場ヒアリング)

  ③電書におけるTTS対応課題

  ④音声読み上げ関連技術の勉強

  ⑤合同フォーラム開催など。

  (関連技術の1つとしてSMIL[スマイル]…音声とテキストの同期技術として昔から存在、国際的な障碍者用電書フォーマットDAISYに採用されている)

 

部会の研究目標

  ①ガイドラインのブラッシュアップと電子書籍制作過程への適用

  ②TTS対応電子書籍の制作と販売支援

  ③現場への啓蒙活動と世論アピール

シニア層のニーズ増大・移動中ユーザー層などを見込んで、オーディオブックなどにも手を広げていきたい。

 

音声対応の意義

  ①紙の本と共存できる

  ②音で聞くから紙の本よりも「気づき」が深い

  ③音を聞ける機会は本よりも多い(ながら聞き)

  ④集中力は音の方が本よりも持続する

 

出版作業の中で音声化対応を組み込むには?

実際出版サイドにヒアリングしても音声化対応は過大な負担とされる。だが「音声を利用した校正作業」という組み込み方をすれば、校正効率は向上する筈(実際に保険会社での契約書チェックで利用されている)。

出版は当初から電書を前提にしたボーン・デジタルが望ましいが、ePub3などのリフロー型電書に対応してくれればSMIL情報を組み込む事も可能で、そうなると点字への変換も可能になってくる。

 

TTSエンジンの課題

第二水準漢字までにしか対応していない(第四水準までの対応が求められているが、開発コストが膨大)、同音異義語対応に問題、長い熟語の読み対応が難しい、記号の処理(「12:30」の「:」など)、固有名詞と普通名詞で同音異義状態になる場合の処理など、課題は山積。

 

色覚障碍者へのアプローチとしてのTTSを考えても良いのでは。

特に高齢化による白内障や目の霞みに起因する色覚障碍で文字判読困難になるケースを考えると、この最終発症率は100%になる。

 

・電書協特別委員会②インターフェイス研究部会

電子書籍を普及させるためにソフトやクラウドサービスをユーザー視点でモデル作りする。

アクセシビリティ配慮したビューアのインターフェイスを検討。

電書アプリとストアの連携・機能を洗い出して、「誰でも同じように購入・閲覧・補完できるインターフェイス」仕様を検討

 

ビューアに求められる機能=シンプルな操作・画像の見やすさ・高速なコマ送り

→マルチメディア最適化・画像最適化・文字最適化の方向性

 

実のところ各社バラバラなインターフェイスになっていて、iBooksの挙動を単に真似してみただけという所も少なくない。また各種端末・各種ストアで差別化を行うために独自機能を取り入れている部分もある。

→モリサワMCbook、大日本honto、アマゾンKindleなどの実例で比較

 

・電書協特別委員会③デジタルデータ研究部会

視覚障碍者、高齢者、上肢不自由者をも視野に入れた読書障碍者向けのアクセシブルコンテンツの充実

対象は狭い範囲だが、この領域のアクセシビリティ向上が広い市場でのユーザビリティ向上に繋がるのでは無いか。

先のディスカッションでもあったが、ボランティアベースではどうしても先細りになりがち。ビジネスとしてアクセシビリティを成立させたい。

Amazonの実例:OverDriveのシステムで電子図書館サービスにKindleを使用

 

電書検索もOPAC(書名検索)からディスカバリ・インターフェイス(全文検索)の方向へ

 

①アクセシビリティの中でも特に読み上げ機能への期待が高い、②版元はInDesignかQuarkで作成したPDFを所持しているケースが多い事から、PDFからテキスト化ができれば問題が一挙解決できるのではないか。

→一旦TTSにするためにテキスト化が必要になり、それが二次利用問題に抵触する

→読み順情報を組み込んだテキストデータ化&TTS化を一括処理するソフトにしてしまえば解決できるのでは

 

4.閉会挨拶:電流協事務局長 川崎誠一