井上純弌氏の「聞くだけで上手くなる萌え&エロ絵講座」・補講
とうとう今回のpostでラストです。真っ白に燃え尽きたので当分探さないでください。
9/25イベントのテキスト起こしだけで長編インタビュー記事を一本仕上げてるような心境です。
この後、改めて懇親会という名の下でフリートークが行われていますが、そちらはメモを一切取っていないので全て割愛いたします。参加した人だけのお楽しみとさせてください。
今回の補講部分で大分フリートーク的な色合いが出て来ている所から、雰囲気はご想像いただけるかと。宮崎駿監督・押井監督・庵野監督・佐藤順一監督・幾原監督・ヤマカン監督などをネタにしたアニメ談義が筆者にとっては強烈に記憶に残っております。
7)補講:コンテンツの中身論=キャラクター論
a)短命な萌え/エロからキャラクターへ
さて。ここまで話してきた萌え・エロの時代性というか一過性は、シモに直結してる限り何にでも転用が効くんです。
それに関連した目下の問題は、僕の本職にも直結したフィギュアですね。
これ、一体8千円とか1万円とか平気でする世界ですけど、言いにくいんですが3年くらいでゴミになります。ヤフオク見れば分かりますね。プレミア付かないんですよ。割と値が落ちないのは寧ろ、リアル系でちょいエロな鶴田謙二さん的な、胸が大きくて腰が細くてお尻がでっかいっていう、土偶の時代から愛されてきたタイプになりますね。でもプレミアが付くのは極々少数です。大半は次々と消費されている。
そこで問題。「いつお前らが気づくか」(笑)。
「あれ? フィギュアって買っても意味無くね?」って何時気づくか。それが怖い(笑)。
えーと……、そんな事は無いんですよ(笑)。今を謳歌しましょう!
今そのフィギュアを手に入れる事であなた方は幸せになるんです。後、可動フィギュアとかだと色んな角度やポーズを楽しめるんで、意外と寿命も長いです。
逆に、こういう値下がりの生じない趣味、投機的価値のある趣味ってのも実はあるんです。
シモに直結した物と違って値段が急落したりしない、移り変わらない物。
それは、キャラクターなんです。これが一番重要な事なんです。
これは僕が「中国嫁日記」を立ち上げた理由でもあるの。
b)キャラクターの長命性
キャラクターこそがキモなの。
さっき話したように普遍的な物は何も無いんです。みんな流れていってしまう。特に下半身絡みは。一回フンガフンガしちゃうと、もうボーッと抜けてしまってどうでも良くなるの。男は。
そんな中でずーっと残り、ずーっとお金を稼ぎ続ける物。それがキャラクターなんです。
一番いい例は「仮面ライダー」です。
ライダー関連の物は基本的に安くなりません。基本的にどんどん上がる。過去の物を持ってれば持ってるほど上がる。
ライダーだと上がるけど、ここで例えば「エクシードラフト」とかマイナーヒーロー系になると安くなっちゃうんです。キャラとして今も生きている物は値段が落ちないという事なんです。
「ガンダム」もそうですね。
ガンダム関連は沢山生産されるから、値段が落ちるとまで行かなくても安定はする。でも買えないガンプラは間違いなく値上がりしますね。
「ウルトラマン」もそう。買えないウルトラマングッズは必ず値上がりする。
だから変身グッズとか皆さんが持ってたら、老後のために取っておくといいんですよ(笑)。でも萌えフィギュアには意味が無い(笑)。
ヒーローとかヒロイン…アメコミのヒーローとかもそうなんですが。寿命の長いキャラクターは、何度も何度もリメイクされるんです。次々と新しくリメイクされていって今も現役な物は、値が下がりません。
それはみんなが、キャラクター商品を買うという行為を通して、過去という名の今を買ってるから。今に続く過去を買ってるから。
ちょっとマニアックになりますが、軍艦プラモの世界の話をします。
この世界で商売になるのは、国内では連合艦隊だけなんですよ。ドイツの有名な戦艦とかを出してもあんまり売れない。勿論世界的に見れば売れます。タミヤとかはそうやって黒字を出している。けど日本じゃ売れない。何度も何度も連合艦隊や戦艦大和を買ってるの。
それはなぜか。連合艦隊のあの勇姿が、我々の今に繋がっているからです。
ドイツの戦艦は我々に何もしてくれない。けれど連合艦隊のプラモは我々に何かを与えてくれる。だから買うんです。
我々に直結した物にしか我々はお金を使わないんです。
そこで「今これが必要だ」と思わせる力って一体何かと言うと、今に繋がっているキャラクター性となるんです。キャラクターは古びないんですよ。
今と繋がってなくてもお金になる場合もあります。例えば大ヒットした物。分かりやすい例では大ヒットした歌=懐メロ。
懐メロをこの会場みたいな狭いスペースの酒場で歌ってお金を稼いでる芸能人は一杯居ます。彼らはぞれでずっと食っていけるんです。
なぜ昔の物にみんなお金を払うのか。
それは彼らが、「かつての自分」に対してお金を払ってるから。時代を振り返るために。
だから何年経ってもお金になるんです。大ヒットしていれば、ですが。
大ヒットしたからこそ、ピンクレディーには何年経ってもお金が入るんです。
そういう物を作り出せた奴こそ勝てるんです。
作り出せた筈の松本零士先生はなぜあんなにがっつくのか(笑)。
もういいじゃないか!
「どんなときも、どんなときも」お金が入るから!(笑)
もう歴史に名前が残るくらいだからいいじゃないか。ハーロックだってまた実写になるんだし。
……ともあれ。そういう領域こそ、クリエイターが最後に到達しなきゃいけない物なんです。
c)アートも漫画も文学も
さっきのすぐ飽きちゃうって話は、芸術についても当てはまる話で。
現代芸術でも同じ事が起こります。芸術も消費されちゃうんです。新しい絵柄があってそれに慣れちゃうと飽きられるんです。
で、村上隆さんから先日「それに堪えうるにはどうすればいいんですかね」と問いかけられた。僕の回答は「それはキャラクターを作り出す事だ」なんです。
アンディ・ウォーホルってキャラクターなんですよ。絵じゃないの。アンディ・ウォーホルはそのバックに歴史とか物語を持っているんですよ。同様にゴッホもそう。ゴッホが死んでからの方が売れてるのは、彼がキャラクターであり彼の人生がドラマだから。
我々がお金を払うのは、その時代か、それとも今に続くキャラクターを持ってるかなんです。
キャラクターこそが重要なんです。
劇画の世界に、僕の尊敬する小池一夫先生という方がいらっしゃって。
この方が劇画村塾というのを作ってノウハウを教えてらっしゃる。
実は高橋留美子とか、漫画業界の大抵の人間がこの劇画村塾出なんです。「え? この人が!?」という人まで。劇画村塾出の人間を消したら、本当に漫画文化が無くなるんじゃないかってくらいに、我々と密接に関わっているんです。
その「伝説の」劇画村塾で小池先生は何を教えていたのか。一つしか教えてないんですよ。キャラクター。
漫画で出来る事はキャラクターを教える事だけだ。キャラクターこそが漫画の中心である、キャラクターが無ければもう何も無いよ、と。
キャラクターとは何かと言われると、それは人格であり、「そこにその人が居る」というリアリティーでもある。
僕最近ビックリした事がありまして。
「アバンチュリエ」(モーリス・ルブラン/森田崇)って漫画知ってます? 知らないか。みんな買え(笑)。
これはルパンについて描いてある漫画ですね。しかもアルセーヌ・ルパンの、本当に最初の小説をただただ漫画化したものです。これが、すっげえ面白いの。漫画として。もんの凄くルパンが格好いい。
あんまり面白いから、僕「イブニング」で担当やってるっていう編集にこないだ会った時に訊いたんですよ。「これかなり脚色入ってるでしょ? 今に合わせて」って。
でも、違うんですよ。一字一句原作通りそのまんまなんですって。
今の時代にそのまま漫画化して、でもべらぼうに面白い。もう第一話から心を鷲掴みにされるんです。
ただ一つ残念なのは、描いてる人があんまり漫画に慣れてないせいか、「引き」の絵作りが少なくてちょっと読みづらい所。でも読むと本当にグイッグイ引きつけられるんですよ。ルパンが途轍もなく悪人で途轍もなく魅力的。
それが、原作小説を一字一句追ってネーム起こした漫画で、これだけ引きつけられる。
元祖の「ルパン」は凄いんです。「ルパン三世」とはワケが違う。これ見てから「ルパン三世」観ると分かるんですけど、「ルパン三世」って実は「ルパン」のエピソードを幾つも摘んで構成してあるんです。実は初代ルパンの小説の焼き直し。
……それぐらい「アバンチュリエ」は面白いんです。
これだけ持ち上げちゃうと期待値上がり過ぎちゃって、実際読んでみると「普通の漫画じゃん」って思うかも知れない(笑)。でも凄い事なんですよ。この原作小説、どれだけ昔に書かれたと思うんだって。それが今「普通の漫画」とか「ルパンってキャラ立ってる」って思うくらいに読める漫画になるんですよ。それくらいの普遍性を持っている。
それがキャラクターなんですよ。これこそを生み出さなきゃいけない。
d)キャラクター方法論1・石ノ森流
キャラクターとは一体何か。キャラクターが居るリアリティーとは。どうすれば作れるのか。
それを生み出すためには色んな方法があります。
その例の1つが「仮面ライダー」。あれは何が画期的だったかと言うと、当時最新の、誰も知らなかった(石ノ森章太郎だけは知っていた)、海外のSFの数々を見事なくらいにパクってきてるの。しかもいい具合にパクってる。なぜなら、彼自身がSFファンで、彼がシビれた、面白いなぁと思う所を集めて作ってるんです。だから当時凄い新しかった。何て格好いいんだ、と。
他にも「サイボーグ009」。題名からしてサイボーグですよ。その概念自体が当時新しかったんです。機械を人間の身体に入れるって何て格好いいんだ、と。
そうやって、新しい技術や見た事も無い何かで、現実の見方にブレイクスルーを提供する。
これによってもたらされる新しい視野や新しい解釈が、一つのキャラクターなんです。
最近はそういうブレイクスルーも大分減ってはいるけど、無いワケじゃない。
例えば「マトリックス」。
「マトリックスを超えた」とか言われて、何度超えられてるんだよ一体(笑)。実はその一本たりとて超えちゃあいないんだけどね。「マトリックス」自身が一本目を超えられていないのが凄い(笑)。
「マトリックス」っていうのは、仮想現実という物に対する新しい見方を我々に与える事によって、「マトリックス」というキャラクター、「マトリックス的解釈」というのを教えてくれたんです。「サッカー・パンチ」(邦題「エンジェルウォーズ」)、「インセプション」といったタイトルは、その派生系として生まれたワケです。
この場合、一番最後まで生き残るのは、勿論「マトリックス」なんですよ。
「マトリックス」はもしかすると、この先百年とかの間に「マトリックス2」「~3」「ネオ~」などと、その時代に合わせた「マトリックス」が作られるかも知れない。
それは「ロッキー」が「ロッキー2」「~3」と作られていったのと同じですね。
「ロッキー」ってのは、町山さんが解説してるように、当時のアメリカン・ニューシネマっていう暗い風潮(反体制的主人公が、決まってアンハッピーエンドを迎える等)の中で、端的に「努力すれば必ず報われる」って映画を作って、みんなに希望を与えてくれたんです。そこから「ロッキー」って言うのが希望の象徴としてみんなに広まっていったんです。
これも「今までに無い、新しい視点を与えた」という意味で同じ範疇ですね。
e)キャラクター方法論2・サザエさん流
あともう1つあるんです。それが、僕が「中国嫁日記」で取った戦法。
それは、皆さんがよく知ってる物。それに対してモヤモヤした感情しか抱いていなかったモノに、形を与える事です。つまりは「中国嫁」。これも「中国人というのはこういう物です」という典型を与えているワケです。
だから「中国嫁日記」がヒットするだろう事は、実は描く前から分かってました。誰かがやるだろう。これは先にやった奴が勝つ、と。
「ダーリンは外国人」ってのは「国際結婚」というモヤーッとした物に形を与えているんです。「日本人が知らない日本語」は「日本人留学生」という物に、もしくは「日本語の面白さ」という物に形を与えているんです。そうやって今でもベストセラーを続けてるんです。
そうやって、みんなが何だか知らないけどモヤーッと知ってる物に形を与えるのが強いの。
「サザエさん」もそうです。「家族」って単位はみんな知ってるけどモヤッとしてる。そこに形を与えてるんです。
以前にも話したんだけど、家族ってのは常に崩壊の危機にあるんです。だから常に新しいドラマを欲してるの。常に新しい時代の「家族」という物語が我々の前に現れるのは、モヤッとしている「現在」に形を与えるからなんです。
売れている批評家もそうなんです。
常に我々がモヤッと思ってる現実に形を与える。すると「なんか凄い分かったような気がする! 世界ってこんなに簡単だったのか!」と、こういう風に思わせる事ができる。……まぁ勿論それって嘘なんですけど(笑)。
そういう人こそがお金を集める事ができるんです。茂木さんなんかもそうですね。モヤモヤーッとした物にキャラクターを与えて教えてくれる。「嫌韓流」も、モヤモヤーッとした「韓国人」っていうのに、「韓国人とはこういう悪い物である」というキャラクターを提示している。
こういう手もあるんですよ。
f)2つの方法論検討・前者の変形としてのエヴァ
他にもまだ手はあります。だけど大まかに分けて、これまでの2つの方法になるんです。
「今までに無い物を作り出す」っていうのと、「みんなが知ってる物に形を与える」。
で、間違い無く難しいのは、前者の方。当たり前です。もう大抵みんな知ってるから、無い物ってのが無いんだもん。それに「新しい物を分かりやすく見せる」っていうのは、物凄く難しいんです。
例えば「仮面ライダー」が「変身」という概念を我々に伝えるのに、どれだけ苦労したか。
今でこそ定着してる「変身ポーズ」が生まれるまでにどれぐらい試行錯誤したのか。
それまではパーッと光るだけだったり、ベータカプセルを掲げるとか、ジュワッとメガネかけるだけだった行動に、ポーズを付ける事で、綺麗に「何か強くなった」「何か変わった」「何か別の物になった」と思わせる。更には「変身!」とかけ声を挙げるだけで自分が強くなったように思わせる。これは1つのロマンですよ。
子供の中には、何かする度に心の中で「変身」って唱えてるの居るんですよ。そういう事をやる事で、彼は現実に向き合う事ができるんです。これは凄い良い事なんです。ロマンっていうのはそうやって人に力を与える事ができるんです。
我々の生活の礎になり、密接に繋がっていき、我々が消費していく「ロマン」。
そんなロマンにするために必要な努力っていうのは、画期的な物ほど難しいんです。
例えば「ウルトラマン」。
身長60メートルもある宇宙人がいきなり現れて、我々の味方だと思わせるのがどれだけ難しいかって話(笑)。だってそれまで「ゴジラ」とか「ウルトラQ」とかしか無かったんだから。怪獣しか居なかったから、デカイ物は必ず町を破壊する物だったんですよ。
それを「僕達の味方だ」と思わせるのが如何に画期的だったか。当時の子供たちに如何に印象深く刻まれたか。……それは結局「ウルトラマン」しか生き残らなかった事が端的に示していると思うんです(海外じゃ「ジャンボーグ9」の方が知名度あったりもしますが)。
「なんで宇宙人が僕達の味方なの?」って疑問を解決するには、凄い手順が必要なんです。だからいまだに「ウルトラマン」シリーズで完璧な第1話って存在しないの。初代マンの第1話って今観ると、なんだかナアナアで登場してナアナアで終わってるんですよ。
勿論、何回も何回も繰り返す事で定着した部分ってのもあります。例えば「ウルトラマングレート」の第1話。オーストラリアが舞台なんですが、ウルトラマンが現れて、外人の隊長が「敵だ!」って攻撃命令を出すんです。ところが部下は「出来ません! 美しい!」って言う。そこで僕達はジーンと来ちゃうワケですよ。「そうだ、俺たちのウルトラマンは美しいんだ! 美しいから攻撃できないんだ!」って納得しちゃう。けどこれ、冷静に考えて初めて観る人にとっては「なんじゃソラ」ですよ(笑)。美しくねえし。攻撃しちゃえよって(笑)。でも、何度も繰り返してるから、我々は銀色の巨人が現れる事に感動するんですよ。それは繰り返す事によるリアルなんです。
でもね、一番最初ってのは物凄く難しいの。
「マトリックス」だって普通の人がアレ観ても分かんないよ。例えば「AKIRA」だって、当時の人は画期的だからとかよりも「流行ってたから」読んでたの。何だか分からないけど流行ってるから読んでるって事。それくらい分かりにくいんですよ最新鋭っていうのは。
しかも、円谷さんの特撮技術があったり、大友克洋みたいなとんでもない描写力があったり、ウォシャウスキー兄弟のように凄い映像のアイディアがあったりして、初めて実現できるような、極めて難しい物なんです。常人には無理です。どっかの監督にも無理(笑)。
画期的な何かって、だからすっごく作りづらいんです。
それを回避する方向として、庵野さんみたいに「今まで自分が面白いと思った物を全て繋げる」っていう手もあります。
エヴァの何が画期的だったか。これは2つあるんです。
1つはオカルト。ロボット物にオカルト・宗教を持ち込んだ。これが画期的だったんです。
もう1つはエロとバイオレンス。まずアニメにエロを持ち込んだ。当時アニメでエロをやる例ってあんまり無かったんですよ。今でこそ頻繁にエロシーンありますけど。みんなあの頃には「セーラームーン」のエロ漫画も凄い沢山出てたし、「セーラームーン」自体が余りにもショッキングだったから(あんな格好して戦うんですよ?)、感覚が麻痺してたんですけど。でも実は劇中でセックスするのって無かったんです。「オーガス」? 勿論有りましたよ(笑)。でもね、だったらみんなオープニングでそれ以降セックスしたかっていうとやらなかった。つまりアレは上手くいかなかったんですよ。だから止めたの。でもエヴァは「とりあえずショッキングなシーン入れとけや」って入れちゃったの。とりあえずミサトのセックスも入れたし、とりあえずカヲルくんの首も飛ばしちゃった。
エロスとバイオレンスと食欲。これは重要なんです。でも宮崎駿が言ってるように、物を美味しそうに食べる所を見せるのは凄く難しいんです。つまり食欲って、アニメで表現するのは物凄く大変で疲れる。だから止めちゃって、残るエロとバイオレンスに特化させる。これをやったのが庵野秀明なんです。
俺はコレ目の前で言われたんですが、「男は勃ち勃ち、女は濡れ濡れ。これを『勃ち濡れの法則』と言う」って(笑)。但し(当時)DVD買う人間は男が多いんで比率を調整して、「勃ち」7の「濡れ」3ぐらいにする。つまりカヲルくんを最後にちょっと出せばいい(笑)。後は勝手に萌えるから。売れる為には「サービスサービスぅ♪」って言って残りの7を作るの。
……それはともかく、人間の根源的快楽は(食・エロ・バイオレンスの)3つしか無くて、その2つを確実に押さえるってのは重要な事なんです。
そうやって庵野秀明は、自分の面白いって思う特撮やアニメといった物を繋げて画期的な作品を作っていった。
でも、これも庵野秀明くらいに才能のある人間か、もしくはあのとんでもない人間に付き合ってくれるGAINAXの連中が居ないと無理なんです。
どこの世界に、全26話分の制作費を第14話で使い切っちゃう人が居ますか(笑)。
残り制作できませんって言われて「はぁそうですか」って言ってのける人が居ますか(笑)。
それを「分かりました残りの制作費でどうにかしましょう」って言う人間がGAINAXに残ったから、あんなおかしな事になったんです。
これは庵野秀明の友達って人に聞いた話なんで、本当にあった事かは知りませんけど。第14話が終わった後に、有名な「スタジオ・アルカディア号事件」っていうのが起こったらしいんですよ。
ある人が「諸君、よく頑張ってくれた! しかしこれからの戦いは過酷だ! そして、お金は出ない。タダ働きだ! それでもいい奴は残れ。普通の人間は……去っていい」って(笑)。そう言った時に、誰も立ち上がらなかった。それを期に、後のクオリティーがまた上がった(最後には力尽きちゃいましたけど)という、いい話なんですが。
そんな事は起こらない。そんな事って言うより「奇跡」は何度も起こらないんですよ。
庵野秀明の作った歌詞の中に「奇跡は起こるよ何度でも」ってのが有りますけど(笑)。
でもそんな奇跡に期待するのはダメだろ。それは付き合ってくれる同志を浪費するだけだから、止めろよって思う。
それより僕は宮崎駿の言う話を支持したいんです。
宮崎駿は天才アニメーターにしてアニメ監督でプロデューサーでもあり企画者としても優秀な方ですが。彼は「5メートル以内で発想しろ」って言うの。
「企画は5メートル以内で発想しろ。それ以上に広がるような事や分からない事は書くな」と。「その5メートル以内の事に対して、新しい目を向ける事によって、新しい何かが生まれてくるんだ」って。
(※筆者注:「仕事道楽-スタジオジブリの現場」によれば、「企画は半径3メートル以内に一杯転がっている」という話があり、「千と千尋」がキャバクラ好きスタッフの新人キャバ嬢成長話を元に生まれたという逸話があるので、それと同趣旨かと推測する)
なるほどなと思うワケです。これの方が正しい。
だからもしもあなた方が業界の人間だったり作家だったり、作家になりたいと思ってる場合は、5メートル以内で発想すべきなんです。
普段モヤーッと思ってる事に対して「こういう事ですよ」って形を与えるのはそういう事。
その形を与える物はキャラクターなんです。
これは前にも言ったけど、中国の解説漫画って、もう10年以上も描いてらしてる第一人者が既にいらっしゃるの。もう中国行ってるような奴だったら誰もが読んでる。でも、みんな読んでないでしょ。
この方は「中国そのもの」を描こうとしてるんです。でもそれじゃダメなんですよ。
中国そのものってのは認識できないの。「中国『人』」を描くしか無いんです。なぜなら、キャラクター=人格=人間しか、我々には認識できないから。
「地球幼年期の終わり」でやってくるオーバーロードが悪魔の形をしている。これは、悪魔とか人格を認識できる形にしないと我々が認識できないからなんです。
スターチャイルドとかいったワケの分かんない物は認識できない。それでは人間を次の段階にシフトできない。もしくは小説として失敗したり、ワケの分からない映画になっちゃう(笑)。でも「2001年~」の映画は、あれは「分からない映画」として生き残る事を選んだの。わざと分かりにくい映画にして、「分からない映画」というキャラクターを選択したの。でもそれは2回は出来ない方法です。奇襲作戦だから。
g)更に別の方法=奇襲
そうそう、もう1つ売れる物を作る方法があります。キャラクターを立てる以外で。
でもこれは非常に危険だから止めた方がいいと思う。それこそ奇襲です。
それは、みんなが信じられない事を描く、もしくはみんなの不安をあおり立てるという方法。
「ノストラダムスの大予言」とかね。みんなが知らない、モヤッとした未来への不安に形を与えてるでしょ。如何にも奇襲なんです。
いきなり不安にさせる。いきなり「これを買わなきゃダメだ!」と思わせる。もしくは「これは画期的だから是非買った方がいい」と思わせる。そういう奇襲です。
これは大成功するかどうかはちょっとアレですが、大抵は碌な人生が送れない(笑)。
奇襲をみんなが理解できないか、もしくは奇襲にみんなが引っかかって大金を儲けても、後に叩かれる。
奇襲だから。みんなをビックリさせて消費させるという方法だから。「わーなんて凄いんだ!」って金を払わせてもすぐに飽きる。
これが今繰り返し行われてる世界があります。それがお笑いなんです。
「ワンフレーズ芸人」って居るじゃないですか。「どうもヒロシです」とか。あれが奇襲。
みんなが思いも寄らなかった事を言って、一瞬笑わせるの。ワンフレーズだから寿命は非常に短いんだけど、でも成功する可能性はあります。だけどこれじゃあ長続きしない。
でも、そこから自分をキャラクターにしていく事ができる人は、芸人として長続きできるんです。「ヒロシです」なんてワンフレーズで終わらないの。そうすると(ワンフレーズ芸人じゃないけど)ビビる大木さんみたいにずっと生き残っていけるの。
つまり「こういう人間が居る」「人格が居る」という形で認識させる事でしか、我々にできる金儲けの方法は無いんです。残念ながら。
h)まとめ
という事で。さっきも言っていた「売れる漫画を描きたい」「エロ漫画家には先が無い」。これを食い止めるには方法は2つなんです。
あなたがもし天才ならば、目指せウォシャウスキー!
新しい何かを作れ。新しい何かには奇襲だって含む。でも奇襲は長続きしない。
だけどエヴァは奇襲じゃなかったでしょ。マトリックスも。どちらも「中身」があったから。でもそれが出来るのは天才なんです。
そうじゃなければ、5メートル以内の発想で、なんだか知ってるけどモヤモヤッとしてる物に形を与える方法を採るんです。
……いやぁ、タメになったなぁ(笑)。
そういう話です。
後は、……萌え漫画や萌え絵やフィギュアは、沢山買って欲しいなぁと(笑)。
その「萌え」を買って得られる幸せな気持ちは、5年後には得られないから。…5年後には別な「萌え」で得られるとは思うけど(笑)。
それは置いといて、今あなたが気分良くなるためには、これが必要なんです。
古くなったエロ同人とか、もう今見ると「何だこりゃ」と思うかもしれない。
だけど、さっきも言いましたが、我々は今だけにお金を払うワケじゃないんです。
ノスタルジーにお金を払う場合だってあるじゃないですか(笑)。
他の人にとっては紙屑やプラスチックのゴミかもしれないけれど、あなた自身にとっては、当時のあなたの「萌え」が、想い出の花を咲かせてるかも知れないじゃないですか。
捨てないで、ちゃんと取っておいて欲しいなあ。もしくは沢山買って欲しいなぁと思うワケですよ(笑)。

